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物撮影:「自然光で撮る」

lighting

先日、ある企業の制作部に撮影指南にでかけました。その企業では、社員の方が、自社製品を使った料理の写真を撮っていて、自社サイトやカタログに掲載するとのことでした。それまでは、なんとかいろんなライトを使って、四苦八苦されていたようです。

今までにも、料理や商品の撮影指南をした経験があるのですが、みなさん、プロが撮ったようなクオリティの高い写真を撮るためには、ストロボやボックスライトのような機材を使って、複雑なライティングをしないといけない。というような誤解を持っておられるようです。ネットなどで、簡易商品撮影用のライティングセットが安く売られていますが、美しい印象的な写真を撮るためには、何もわざわざ機材を購入しなくても、光が良く入る部屋があれば、それで十分です。

その現場では、ちょうど、午後の美しい光が入る大きな窓があったので、その窓際に、テーブルを置いて、光が逆光気味に入ってエッジが立つような位置に商品(お菓子)を置いて、陰の部分に白のスチレンボードのレフ板で補助光を当てただけのセットを組み立てました。で、テスト撮影をして結果を見せると、こんな簡単なセットで、こんな美しい写真が撮れるものなのか?と驚かれていました。光さえ見る目があれば、物は美しく撮れるものです。

では、光を見る目というのはこの場合どういう意味なのでしょうか?
「物」の持っている立体感や質感、透明感等は、「逆光」によって際立ってきます。「逆光」というと、一般の方にとっては、ハレーションが起こるので避けるという感覚がありますが、物を撮るには効果的な光です。絵画的に撮るには順光も使いますが、物の質感を際立たせるには逆光です。自然光の場合は、カメラの位置から見て逆方向から光が来るように物を配置します。この角度から光が入った場合は、このような感じで写る。という経験を積み重ねていくと、自然に光を見る目ができてきます。

窓から入ってくる光が、直射日光で強すぎる場合は、窓にトレーシングペーパーを垂らして光を柔らかくすると効果的です。トレーシングペーパーが厚いと光の質は、よりソフトになります。 デジカメで撮るとすぐに写真が確認できますが、窓から入る光だけで撮った場合は、影ができてコントラストが強くなります。この影の部分にレフ板で補助的に反射光を当て、コントラストをコントロールします。

レフ板は何も高価なプロ用の折りたたみ式のものは必要ありません。レフ板は、被写体の大きさによって、サイズも変わってきますが、単品の料理等の小さな被写体の場合は、A4の薄い発泡スチロールボードで大丈夫です。私は、これを2枚、テープで蝶番のようにつないだものを、被写体の前に置いて使っています。あと、レフ板に、料理用のアルミホイールをそのまま張ったもの、アルミホイールをくしゃくしゃに、シワだらけにして張ったものも用意して、使い分けています。シワがあるホイールの方が反射光がソフトです。また、鏡も場合によっては効果的です。自作で用意すると、2〜3,000円もあれば、いろんなサイズのレフ板が用意できるはずです。

ロケで人物を含む大きな被写体を撮る場合は折りたたみ式の丸いレフ板が物を言います。このレフ板は、通常表が銀、裏が白になっていて、欲しい光によって使い分けますが、表が金色のものもあります。http://www.calumetphoto.com/Lighting/Accessories/?page=3
この金色のレフ板はアメリカで良く使われているようです。白人は、ノーマルで撮ると、白い肌に、血管が紫色に写ることが多いので、肌を奇麗に見せるためフィルムではアンバーのフィルターをかけることが多いのですが、この金色のレフ板も似たような効果があります。写真を撮るためには、このような機材を使う。というルールは全くないので、自作したりして、いろんな光を創ることにトライすると表現力もアップしていくと思います。

花の写真は、フラワーアレンジメントのカットですが、フラワーアーティストさんのアトリエで撮ったものです。どのように撮るのか、どの場所で撮るのか?は、すべて任せていただいたので、私は迷わず窓際で、自然光のみで撮りました。午前中の低い逆光に、手前から大型のレフ板で補助光を当てたライティングです(MamiyaRZ67, 110mm, RDP2)。

ペリエの写真は、エッセイにカット的に挿入した写真です。これも自然光です。窓に厚手のトレーシングペーパーを垂らし、その50cmほど前方にペリエを置きました。窓を背に、もろに逆光が入ってくる配置になっています。意図的にコントラストが欲しかったので、前方からの補助光は、発泡スチロール板の弱い反射光のみです。印象的な写真にしたかったので、ラベルとボトルの線をシンボリックにトリミングしてみました(Nikon D700)。

コラム

※3年間ほど、連載で花の写真を撮っていた時期があります。花は、人物とも物とも違う不思議なジャンルだと思います。ある盛夏の早朝、あさがおの撮影があって、今は亡き安達瞳子先生のアトリエまで出かけました。あさがおは花に最適な温度と湿度を保った、専用の部屋に保管してあって、そこから外に出すと、目覚めた様に花を咲かせました。花が咲いて、写真に耐えることのできる姿を保っているのが約10分間。まず、サブのあさがおで、アングルを決めて、本番に臨みましたが、少しアレンジに時間がかかって、実際に撮影に当てられた時間は約5分。ポラに2分。「もういいから早く撮って」という編集者の絶叫のような声にせかされてシャッターを押しました。寿命が縮んだ撮影でした。