「スティルライフとイメージトレーニング」

lighting

写真家にとっては、撮影のテーマを見つけるのが、楽しみでもあり、苦しみでもあると思います。
一時期、Still Life(静物)を撮っていましたが、ただ静物を美しく写すだけでなく、そこに「何か」を感じる写真を撮る。ということをテーマにしていました。静物写真は、人物撮影と違って、被写体のジャンルがほぼ無限です。また、組み合わせや構成によって、受けるイメージが異なってきて、バリエーションの可能性も広がってきます。

この写真は、ただ単にフルーツを撮ろうと思ったのではなく、メタリックなフルーツ皿の曲線と、フルーツの配置から出てくる円の動きを組み合わせて、何かシンボリックな動きを出そうと考えました。

この撮影では、最初に皿を配置しました。背景は床ですが、床の直線が皿の曲線を横切るような幾何学的な構成にしました。それから、マンゴーを中心に、イチジクのフォルムと芯から伸びる曲線の軌跡から生まれる動きが出る様に、それぞれのフルーツを構成、配置しました。
ピントグラスを覗きながら、フルーツをミリ単位で動かして、全体が落ち着き、なおかつ、「ある動き」「エネルギー」を感じるような配置を時間をかけて探しました。

カメラは8×10ですが、レンズは、8×10では広角の250mmレンズです。これは、わざとパースをつけて動きを出すためと、パンフォーカスを意図したものです(Sinar 8×10、Fujinon 250m、F90、1/60sec ストロボ一灯使用、フィルム:Trix、プラチナパラジウムプリント)。
後にこの作品を個展で展示しましたが、玄光社の書籍の表紙として採用されました。シンボリックなイメージが書籍の表紙としてぴったりだ。との編集長のお言葉に、ちょっとうれしくなりました。

スティルライフの作品では、例えば
  • 絵画的な静物画的なイメージを求めたもの
  • ドアップの質感を強調した接写写真的なもの
  • フォルムや動きをシンボリックに出したもの
  • 異なる質感や、物の組み合わせの意外性で「はっと」思わせるもの
等、その世界は無限に広がります。
リチャード・アベドンや、アービング・ペン、ヒロ・若林らの巨匠を育てたアートディレクター、アレクセイ・ブロドビッチは、アートスクールで、生徒たちに、彼が選んだ物をテーマとして与え、様々なイメージ、スタイルで撮るトレーニングを徹底的にやらせたそうです。そこからは後にアメリカを代表する写真家が数多く出ています。
写真撮影のトレーニングとしても、「物」の撮影は、とても効果的で、これによって、光を見る目やコンポジションに対する感覚、イメージを広げる能力が磨かれてくると思います。もし撮る余裕がなくても、普段目にする素材や物を頭の中で写真として組み立ててイメージするだけでも、十分にトレーニングになると考えています。

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コラム

※90年代は、ロケでも8×10等の大型カメラを使っていたので、機材の量は相当なものになりました。よく京都にロケに出かけましたが、今ならデジタルで軽装備なので新幹線を利用しますが、当時はほとんど車でした。そのため走行距離が伸び、1ヶ月に6000km移動したこともあります。今と比べ気力体力が充実していたからできたのでしょう。海外ロケでも、実によく車を運転して距離を稼ぎました。ですから、車の運転が嫌になり、今では、仕事で必要でないと車は運転しないようになりました。その他の移動は、もっぱらチャリ(ロードバイク)です。