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物撮影:「光を読む」

lighting

日常目にした印象に残っている光景で、ライティングに応用できるものが結構あります。

以前、仕事で、イタリアは、トスカーナのワイン農家に撮影に行ったことがあります。主人に案内されて広々としたキッチンに入ると、中央に大きなテーブルがあって、その上に、デキャンタに入った赤ワインと、野菜等の食材が無造作に置いてありました。キッチンは薄暗く、ドアの隙間から入った強い太陽光が、床に反射して、その反射光が、テーブル越しに下から食材を照らし出すと、それはまるでセザンヌの静物画の様でした。

「物」を撮る場合、通常、物の立体感や質感を出すために、光は、カメラから向かって、やや後方や斜め後方から入ってくるようにします。正面や斜め前方に光があると、立体感や質感が出にくくなり、フラットな感じに上がってしまいます。しかし、正面や斜め前方の光であっても、光が下方から全体に回りこまないに被写体に当たり、被写体のエッジが強調されると、前述のトスカーナのキッチンのように、絵画的な雰囲気が出てきます。

日本の文化の中でも同じような光が存在します。行灯(あんどん)です。行灯はご存知のように畳や床の上に直接置きます。畳の上の生け花や、器、料理は、行灯の光で下から照らし出されたような風情になります。板張りや畳の上で器や生け花を撮る機会がありますが、私はいつも、この行灯の光を意識してライティングをします。

具体的に言うと、被写体の側面か斜め前方に、小型のバンクライトをスタンドに立てずに、床に直接転がします。そうすると、光源は、斜め上を向き、被写体を下から照らし出すような雰囲気になります。ライトはカメラに入るぎりぎりのところまで被写体に近づけます。こうすると、被写体に適正露出を合わせると、被写体の後方は、暗く落ちて被写体が浮かびあがります。ライトを離しすぎると、被写体と被写体後方の露出差がなくなり、結果、光が全体に回り込むことになりフラットな絵になってしまいます。

被写体が光物(光源や回りを映し込む反射体)でない場合は、アンブレラを転がしても良いと思います。このように日常の中にも撮影に応用できる例があります。写真を写し出す光は、ただ単に、被写体を際立たせるだけではなく、どこかで見たような、自然さ、懐かしさがあっても、良いと思います(Sinar 8×10、Mamiya RZ67)。

コラム

※デジタルカメラの性能を云々する場合、良く、「2000万画素の高画質」等と宣伝してありますが、画素数と画質は関係ありません。画素数は画像データ全体のサイズを表すもので、画質は画素自体の大きさに左右されます。画素が大きい方が諧調再現性に優れていて許容度も広いのです。私の経験ですと、35mmフルサイズのCCDやCMOSの場合、画素数は1000万画素前後が最もノイズも少なく、画質が良いと思います。それ以上のサイズで画質も求めるということになった場合には、中判サイズのデジカメを使うことにしています。
今度、ペンタックスから4000万画素の中判デジカメが80万円という驚愕の低価格で登場しましたが、私としては、3000万画素以下の画素数で、画質寄りにして欲しかったと考えています。まだ、テスト撮影のデータを見ていないので、何とも言えませんが、以前645を使っていたので実感していますが、ペンタックスはレンズが秀逸なので、期待しています。問題はファームウェアを含めたソフトの出来でしょう。これが良ければ、欧米のファッションフォトグラファーは一斉に飛びつくのでは?と考えています。